絵本は、子どもたちの想像力を育て、語彙を豊かにします。保育の場では、保育士さんの読み聞かせで絵本の世界に入り込んで、想像の翼を広げます。子どもが絵本の内容について質問したり、保育士さんやほかのお友だちが答えたりして、絵本を中心にした双方向のコミュニケーションが、言葉による表現力や論理的思考を育てます。
絵本の中には、子どもたちに問いかけて答えてもらうような対話式のつくり方をしているものもあります。「これはなんでしょう?」「どこに隠れているかな?」「これからどうなるのかな?」など、描かれた絵を指さしながら、子どもたちと対話をしていく「絵本あそび」ができます。
お話の絵本の読み聞かせでは、子どもたちは、ワクワクしながらお話の中に入り込んでいきます。時には笑ったり、怖がったり、喜んだりと、想像を膨らませながら絵本の世界を楽しみます。子どもは絵本からの刺激で感受性を育んでいくのです。
ある調査結果では、幼児期から絵本に親しんだ子どもは、小学校に入学して字が読めるようになると、児童向けの本のひとり読みをする頻度が高まるという報告があります。
子どもは絵本が好きだからといって、保育園のプレイルームの一角に絵本を置いて子どもが自由に手に取れるようにするだけでは、絵本環境が整っているとは言えません。絵本は子どもの遊び道具のひとつではありますが、落ち着いて集中できる場所である方が絵本になじみやすいものです。
絵本の絵に興味を持って、お気に入りの絵本を何度も見る子どももいるでしょう。保育士さんの読み聞かせでお気に入りになった本を、自分で手に取りたいと思って絵本を開く子どももいます。そういう機会を増やすために、子どもの目につきやすいところに絵本コーナーを設けましょう。
絵本コーナーは、いろいろな種類の絵本をそろえながら、どんな絵本なのかがひと目でわかるように置いてあげましょう。お気に入りの絵本を見つけたらその場でじっくり眺められるように、イスを置いたり、床に座り込んだりしてもいいように空間を整えることも大切です。
保育園のお友だちと元気に遊ぶことも大切ですが、一人で絵本の世界に浸ってどんどんイメージを広げていくことは、子どもの心の成長に欠かせない要素です。子どもが一人で想像の翼を広げられるように、集中できる心地いい絵本環境を整えてあげましょう。
子どもが集まって生活している保育園の中において、一人で絵本に集中するのは、なかなか難しいことかもしれません。ましてや、幼児であれば集中力はそんなに長くは続きません。それでも、保育園内に家庭と同じようにくつろげる空間を設けることで、絵本に親しむ環境を作ることができます。
絵本ルームには、壁や床に無垢材を使って木のぬくもりを感じられるようにしたり、畳や柔らかいじゅうたん、コルク材を敷いたり、子どもが触れる場所に肌触りのいい素材を使うとリラックスできます。
色合いも、無垢材の自然の色、パステルカラー、ブラウン系の温かみのあるナチュラルカラーに包まれるように、敷物やクッションなどファブリックを落ち着ける色に統一することも効果的です。
また、窓を広く取って外光が差し込む場所を絵本ルームにすると、絵本の絵がきれいに見えるうえに、暖かい日差しで日なたぼっこもできます。
保育園のエントランスに絵本ライブラリーを設けて、登園して保育室に行くまでの間にひと呼吸おけるスペースにしている例もあります。お友だちとの生活に入る前に、ワンクッション置くことで保育園の集団生活に入る心の準備ができるのです。
さらに、園庭に大きな木があれば、お天気のいい日に木の下で絵本の読み聞かせを行ってもいいかもしれません。絵本を読む声と自然の音が調和して、子どもの感性を刺激することでしょう。木がなければ、テントを張ったり、ウッドデッキに敷物を敷いたりして、園庭で読み聞かせをするスペースをつくると子どもたちはワクワクします。
普段は元気いっぱい遊びまわる園庭の中で、風に吹かれながら絵本を広げるのはちょっとした非日常感があります。非日常感をもっと広げるために、秘密基地のような小屋や、ツリーハウスを設けて、そこに絵本コーナーをつくるのも楽しい試みです。読み聞かせで膨らんだ想像の世界を自分の中で育てる空間として、自然を感じられる場所は最適な絵本環境と言えるでしょう。