発達段階に応じた食の経験はとても大切です。食を通じて豊かな人間性を育み、生きる力を身につけるため、保育の場では食に関する試みや、さまざまな取り組みを行っています。
毎日の食事は子どもたちにとって、重要な意味があると言っていいでしょう。
振り返れば、身の回りに物があふれ、食べたいものがいつでも手に入るようになった90年代。食べ物や食べ方への意識が薄れ、食の大切さを忘れる傾向にありました。
大人の食生活の乱れは、子どもたちにも影響しました。
これらは食の基本が崩れたことに関係していると言われ、問題視されるようになりました。
2005年に「食育基本法」が施行されてから15年以上が経過し、保護者世代の子どもの頃にはなかった言葉、「食育」が注目されるようになってきました。
食育とは、偏った栄養摂取や食生活の乱れ、肥満や痩身傾向など、子どもの健康を取り巻く問題を解決するためのものです。食についての正しい知識や生活習慣を身につける積極的な取り組みが重要です。
幼児期の食体験は、心と体の成長に密接に関わっています。子どもの頃の食育で生涯の健康的な食生活、健やかに生きる基礎が作られます。
厚生労働省は食育を通じ期待する子どもの姿として「5つの子ども像」を掲げています。
保育園でも幼稚園でも、この基本的な食育の考え方に違いはありません。
多くの園で5つの子ども像に基づいた、さまざまな食育活動が行われています。子どもがいきいきと健康的に過ごすために必要不可欠なのが、体を思いきり動かす遊びです。お腹がすくと食事はより一層おいしくなります。みんなで食事をしながら、食べ物の感想をいい合うなど、食に関する話題を共有する時間が生まれます。食事によって友だちとの関係が深まり、仲間が増えて日々の楽しさや充実感が味わえます。
食に関する絵本を使った食べ物のシルエットクイズ、食べ物を擬人化させた本の朗読など、食への関心を持たせ学ばせている所もあります。
「おべんとうの歌」「いただきますの歌」など、子どもが大好きな音楽を使って食事と向き合うのも立派な食育です。
食材の栽培や調理の見学、簡単なお手伝いなども、食を営む力につながるでしょう。園では子どもが意欲的に新しい食べ物に興味を示すよう促しています。
待機児童は少しずつ減っていると言われますが、保育施設はまだまだ不足しているのが現状です。こうした時代のニーズに応え、開園の準備を進めている自治体や企業も多いのではないでしょうか。
子どもが自宅の次に多くの時間を過ごす保育園や幼稚園。園はたくさんの経験を積む大切な場所です。求められる空間や人気の設計、その傾向は年々変化しています。
中でも食事をする部屋は、ダイニングやランチルームと呼ばれ、食育を実践するためのスペースとなっています。子どもが「食事の時間」という意識を持ち、食に集中できる形状。他の部屋とは異なる工夫が求められます。
ダイニングが気に入ると、子どもたちの食べる量も増えるようです。大人にも言えることですが、心地いいスペースでの食事はおいしさが増し、気持ちの高揚にもつながります。
空間が持つ力によって食を楽しみ感性を磨くことは、まさに食育。幼児期の感受性は大人の何倍もあると言われています。経験から感じとったことは、きっと軸となって残るでしょう。園舎設計におけるダイニングやランチルームのデザインはとても重要な部分で、食育をはじめとする園の教育方針に深く関わっていると言えるでしょう。