自然との関わりは子どもの発達を促す重要な要素です。自然の大きさ、美しさ、不思議さに触れると心が安らぎ、思考力や表現力の基礎ができると言われています。幼児期から自然と触れ合う機会を多く持つと、五感が刺激され好奇心に富んだ子どもに育ちます。
ところが生まれ育った環境が都会に近いほど、自然と触れ合う機会は少なくなる傾向があります。畑やビニールハウスを目にしたことのない子どももたくさんいます。
例えば普段、自分たちが口にする野菜にしても、どこで生まれどんなルートをたどってここにあるのか、知らずに育つ子どもも多いでしょう。
スーパーに並んだ野菜を見ることはあっても、土に種を植え、実になったものを収穫し食べていることは知らないまま。そんな子どもたちにとって保育園での野菜栽培は、うれしい経験となるでしょう。
野菜が育つところを実際に見て触れて、最後に食べる喜びを味わいます。子どもたちは栽培の過程で、たくさんの役割に挑戦し多くのことを学びます。
種や苗の状態からの栽培で、子どもたちは野菜がどのように育つかを知ることができます。水やりをして、少しずつ大きくなる様子を観察するうち、「野菜は生きている」という実感を得るでしょう。
水をあげるとイキイキしますが、怠ると野菜の元気がなくなることを覚えていきます。日増しに野菜に対する愛着が強まり、育てることへの思い入れが深くなっていくでしょう。それは「いのちの大切さ」を知る貴重な経験につながります。
栽培環境や天候に左右されて野菜がうまく育たない場合、図鑑で調べ、まわりの大人に話を聞くなど、それぞれの子どもが協力し合い情報を集める場面もあるでしょう。
「どうすればうまく育つかな?」と試行錯誤することは、さまざまな学びとなって残るはずです。
野菜嫌いの子どもや、苦手な野菜のある子どもも少なくありませんが、自分で育てた野菜を収穫することで、意識に変化が生まれるかも知れません。
園で収穫した野菜が調理され、目の前に現れる時、「僕が育てたキュウリ!」「私が育てたトマト!」と喜ぶ子どもたちの声が聞こえてきそうです。栽培したことがきっかけで、野菜嫌いを克服できる子どももいるようです。
順調に育てる工夫も大切ですが、収穫できるまで育てきることが野菜栽培における一番の目的です。失敗を避けるためにも、病害が少なく育てやすい品種を選びましょう。ています。子どもが「食事の時間」という意識を持ち、食に集中できる形状。他の部屋とは異なる工夫が求められます。
栽培した野菜を使ったメニューで給食を出すと、育てた自分たちと調理をしている人たちとの連帯を子どもなりに実感するようです。「今日のご飯はおいしかった」という声かけが日常的にできるようになるなど、感謝の気持ちが育つことになるでしょう。
野菜の収穫期が近づく頃、保護者に参加を呼びかける保育園もあります。当日は野菜栽培の活動報告をして、子どもたちのがんばりを伝えます。親子で給食を一緒に味わい、園の食事を知ってもらう機会になります。子どもが食材や調理に興味を示し、食べる意欲が高まる様子を保護者と共有しましょう。
「自然は人間の苗床」と言われます。さまざまな情緒や豊かな感受性を育てる自然体験の場を保育園に設けましょう。広い園庭がない場合でも、プランター栽培なら手軽に始められます。プランターをベランダに置けば、すくすくと成長する姿を間近に見ることができます。
プランターに適した野菜を選びましょう。春に種をまくミニトマト、キュウリ、ナス、枝豆。秋に種をまくダイコン、ほうれん草、水菜などです。
牛乳パックを切って、縦に根が伸びる野菜を育てる方法もあります。ミニニンジンやカブなどは、3歳児くらいの子どもでも楽しめる食育活動となるでしょう。
野菜を育てる楽しさや大変さを体感すると、自然の恵に感謝する気持ちが芽生えます。ようやく収穫できた時の喜びや達成感が味わえます。自分で育てた成功体験は子どもの自信につながるでしょう。