建物は敷地ラインに沿った形状とし、表面にはポコポコと窓をリズミカルに開け、子ども施設らしいかわいらしい印象となるようにしました。外壁は白と茶のツートーンカラーとして、暖かみがあり周辺環境とも馴染みの良い色合いとしています。もちろん敷地横にある六地蔵の建物とのバランスにも配慮した。また、層ごとに水平のラインを入れることによってコーナー部分の曲面形状を強調させ、より柔らかい印象に仕上げています。
建物は、最大限、保育面積を確保できるプランとするため、敷地に沿った雁行型の形状をしています。雁行型によって、見通しの悪さが懸念されましたが、保育室内の見通しも十分確保でき、コーナーが多いことでコーナー保育やエリアが自然と生まれやすくなるのではと考えました。
各保育室や階段室の内装は少しずつ変化をつけ、年齢が上がるごとに新鮮な気持ちになれるものとしています。また、保育室の床は、合板の下地に加えてクッション性の高いCF シートを採用し、居心地、運動時のストレスの低減、転んだ際の衝撃の緩和に配慮しています。そして建具や家具、窓枠等には木を使用することで質感や木の暖かさも大切にしました。
保育室内は上下に点在させた窓で、動きのある楽しい印象となっています。子どもたちの視線に配慮した下窓によって、子どもたちも3階や4階から街の景色を眺めることができます。上の窓は空へ視線が抜けていき、下の窓は道への視線が広がり車や歩く人も見えたりと、子どもたちが視線の変化によって景色を楽しめる窓をデザインしました。
また「毎日の登園が楽しくなるように」を心掛け、アプローチ空間は大切にしています。白い門扉に、人工芝、壁面を一部木張りにするなどちょっとした「お庭」のような場所を演出しました。本園のアプローチ空間は面積の関係上、ごく小スペースではあるのですが、小さなお庭から保育園へ登園していくイメージを演出し、子どもたちの登園時の緊張が少しでも和らげばと考えました。 また、芝張りのアプローチ空間は、夏場はプール遊びの場所としても活用することができます。
「楽しさ」「快適さ」と同時に「安全」「安心」を実現することも不可欠です。
4階建ての保育所であることから、災害時や緊急時の子どもたちの避難経路には特に配慮しました。 各保育室は屋外階段に直接アクセスできるようになっており、屋内階段も階段室から直接道路 へと避難できる経路を確保しています。また、屋上には退避スペースを設け、火災時には上下に避難できるよう計画し、避難階である1階には屋外への出口を多数設けるなどより高い安全性を考慮しました。
子どもたちにとって、トイレはとても重要な場所です。トイレが嫌なだけで保育園に行くことが嫌になる子もいるといいます。そこで、各トイレにはリビングについているような大きなペンダント照明をつけたり、色味や材質を「お部屋」のような設えとすることで、トイレが明るく居心地が良く楽しい場所になるようにデザインしました。
トイレに限らず、園全体として、各々の場所が居心地の良い場所となるよう空間づくりを行い、子どもたちが穏やかに楽しく過ごすことのできる保育園となっています。